VAR編についてはこちらからどうぞ。
半自動オフサイドテクノロジーの概略
Semi-Automated Offside Technology
日本語では半自動オフサイドテクノロジー。長ったらしいので頭文字を取ってSAOTとする。
従来オフサイドを見極めるのは副審の役割でした(最終判断は主審ですが)。
2022年に開催しているカタールワールドカップにはこのSAOTが導入されているが、ピッチにいる審判団のジャッジが基本となり進められていく。SAOTはあくまでも副次的な役割に過ぎないという点は重要。
なおSAOTの導入は今大会が初めてではなく、事前にFIFAアラブカップ2021やFIFAクラブワールドカップ2021で試験的に導入されている。
※ワールドカップでの導入はカタールワールドカップが初めてである。
毎秒500回ボールデータをトラッキング
さらにカタール2022の公式試合球であるアル・リフラは、ボール内部に慣性計測装置(IMU)センサーを搭載しており、難しいオフサイドを検知するためにさらに重要な要素を提供する。ボールの中央に設置されたこのセンサーは、1秒間に500回、ボールデータをビデオオペレーションルームに送信し、キックポイントを非常に正確に検出することができる。
https://www.fifa.com/fifaplus/ja/articles/semi-automated-offside-technology-to-be-used-at-fifa-world-cup-2022-tm-ja
カタールワールドカップ公式球には特殊なセンサーが搭載されており、毎秒500回、ボールのデータを送信している。
また先程の引用元ページの記述には、
“スタジアムの屋根の下に設置された12台の専用トラッキングカメラを使って、ボールと個々の選手の最大29のデータポイントを1秒間に50回追跡し、ピッチ上の正確な位置を計算するものである。”
とある。
こうしたボール内のセンサー及びスタジアムに設置された専用トラッキングカメラを駆使することにより、選手の動きとボールの動きを正確に知ることができ、立体的で非常に細かな判定が可能となっている。
ちなみにセンサー搭載の公式球は充電式。
コンセント前に群がるボールたちはどことなく可愛げがある。
早速SAOTに泣かされる選手
カタールワールドカップ開幕戦でのカタール vs エクアドルの一戦。豪快なオーバーヘッドアシストが決まったかと思いきや、VARチェックが行われる。
数分後、主審はVARのマークを作ってオフサイドの判定を下した。動画内ではSAOTを用いてオフサイド判定をしていたことが分かる。詳しくは動画内の46秒あたりを御覧いただきたい。今大会から導入されたSAOTが、開幕試合から脚光を浴びた瞬間である。
データは自動 判断は人間
半自動オフサイドまでのフローは以下の通り
ボールの位置や選手の位置、攻撃の向きなどをボール内センサーやカメラから収集
人工知能を用いて自動的にオフサイドであるか否かを判断
オフサイドである場合はVAR室に結果を送信して、ピッチのレフェリーへ伝える前に、事前にVAR室でオフサイドであるか確認
VAR室での確認終了後、ピッチの主審へデータを伝え、最終的なジャッジは主審が行う。
結果的にゴールや次の攻撃機会に繋がらなければそのまま流されるが、得点機になりうる状況もしくは得点した直後にこのデータが主審に送られたら、さすがの主審もデータを確認せざるを得ないよね…。
SAOTによってオフサイドと認められた場合は、スタジアム内にも再現アニメーションが表示される模様。
総括
めっちゃ金かけとんな。
ボールに専用のセンサー、スタジアム内にVARとは別で専用のカメラ、オフサイドを判定するシステム…。
とてもじゃないけどJリーグで簡単に導入できる代物ではない。
Jリーグにもスタジアム規格や設備に基準を設けており、場合によってはそういった基準を満たしていないがために罰金を喰らったりする。昨今ようやくVARが導入されたばかりのJリーグで、SAOT(半自動オフサイドテクノロジー)が導入されるのはまだまだ先か…。
あとジャッジの自動化により、審判の意義も問われることになってくる。
結局のところ誰がそのジャッジに責任をもつのかというところで、最終的には当該試合を担当していた主審及びマッチコミッショナーに責任がいくことになる。
副審はオフサイドを見ているだけではないのでまだまだ現役だろうが、将来的にどうなるのか。
主審や副審の負担を軽減させる形でテクノロジーが導入されるのか、主審や副審が存在しなくても試合が成立する形でテクノロジーが導入されるのか。
個人的に注目していきたい点である。
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