Video(ビデオ) Assistant(アシスタント) Referee(レフェリー)、略してVARである。
テクノロジーの介入が多くなってきたサッカー界隈。今回は日本(Jリーグ)に導入されているテクノロジーにフォーカスして、今回はVARに焦点を当てる。
なおこの記事では日本のVARについての記事であるため、昨今賑わいを見せるワールドカップの仕様とは異なる点があるため注意して欲しい。
VARの仕組み
使用する機材等
現在のJリーグでは基本的に12台の中継用カメラの映像を参考にしてVARを運用しているらしい。
問
【VARの舞台裏】VARが主審に映像を見せる時のポイント。Jリーグをもっと好きになる情報番組「JリーグTV」2021年7月29日
VARが見れるカメラの台数は中継のカメラの台数とほぼ同じということですか?
回答
12台ですね今は。Jリーグの場合は今12台でほとんどの試合でやられています。
(中略)
今後ルヴァンの決勝とかとなるとカメラ台数が増えるが、そうした場合は12台を選んで使う。
リンクをクリックすると上記質問シーンに飛びます。
https://www.youtube.com/watch?v=EgMO48CEQyY&t=738s
カップ戦決勝などとなるとカメラ台数が増えるものの、原則としては(協力を得るという形で)事前に12台をチョイスしてVARを運用するとのこと。
上記の画像は実際の試合でVARが運用されている状況、ならびに風景である。
各スタジアムのスペースを利用して、VARを運用している。右下のモニターに写っている映像数的に、たしかに12台分のカメラ映像を用いている。
またVARからの助言やVARの利用については、主審とVAR室が繋がっているインカムにて交信をして判断する。
主審とVAR室
まず試合の大前提となるのは、“主審の判断が絶対”という点である。
たとえ副審やVAR室の審判団が正しくないジャッジであると主審へ助言しても、主審がファールであると判断すればファールだし、PKであると判断すればPKとなる。
だが昨今は際どい場面でのジャッジへの風当たりも強く、主審や副審の人の目(視覚)や耳(聴覚)では汲み取りきれない事象もあるため、VARで助言や確認が出来るようになった。
なおVARと交信ができるのは原則として主審のみである。
主審が耳に手を当てている時は、副審やVAR室との交信をしているという認識で構わない。
もちろん耳に手を当てずして交信することも可能だが、スタジアム内の声援や選手の声に紛れて交信が聞き取りづらいという状況が多々発生するため耳に手を当てることが多い。
“最小限の干渉で最大の利益を得る”
VARの原則(哲学)
VARの哲学は?
JFA ルールを知ろう! VAR
*「最小限の干渉で最大の利益を得る」ことが哲学です。
VARが入ればすべてが正確に判定されると思われがちですがそういうわけではありません。
VARはすべての事象に介入するわけではなく、役割はあくまでもフィールドの審判員のサポートです。
VARは、最良の判定を見つけようとするものではなく、「はっきりとした明白な間違い」をなくすためのシステムです。
https://www.jfa.jp/rule/var.html
VARはあくまでもサポート役であり、VARがジャッジ全般の指揮を執るわけではない。
ピッチ外からの視点であのジャッジは正しくないと判断した場合に限り、VAR室が介入してVARでの再確認を促す。
原則のまとめ
*哲学は“最小限の干渉で最大の利益を得ること”。
https://www.jfa.jp/rule/var.html
*最終決定はあくまでも主審であり、VARではない。
*VARは最良の判定を見つけるのではなく、はっきりとした明白な間違いをなくすためのシステム。
*VARはフィールドにいる副審、第4の審判員と同様に主審を援助する役割。
*得点かどうか、PKかどうか、退場かどうか、人違いかどうか、もしくは主審が確認できなかった重大な事象にのみ介入できる。
特に最終行の赤色アンダーラインについてはやや曖昧な表現となっているが、良くも悪くもこれに一喜一憂する場面があったりなかったり。
とりあえず重要なのは、干渉は最小限に、明白な間違いをなくすのことである。
(たまにVARと主審の交信長過ぎねぇか?みたいなこともあるけどね)
なおVAR導入にあたって、審判員がトレーニングを行っている動画もJリーグ公式チャンネルが上げているため、ぜひともチェックして欲しい。
VAR介入の流れ
前述の通り、基本的には主審のジャッジが尊重される。
※細かく言うと主審や副審,第四審などのピッチ内やその付近にいる審判の判断が優先されます。その中でも特に権限が強いのは主審。
ただし、得点かどうか、PKかどうか、退場かどうか、人違いかどうか、もしくは主審が確認できなかった重大な事象が発生し、主審が見逃した(もしくはVARから見て正しくないジャッジをしていると判断した)場合に、VAR室から主審へ連絡が行く。
VAR室の人達が確認をし、問題がなければそのまま流れるが、問題があるとなれば疑わしい事象について主審とやり取りをし、主審がVARで確認すると判断した場合はVAR室側がそのシーンを準備する。
ピッチサイドにモニターが置かれており、主審はそのモニターに映し出されている映像(VAR室が操作)及びVAR室の人の意見を聞き、最終的な判断を下す。
なお主審がVARからの映像を確認する行為は、”オンフィールドレビュー”と言う。
オンフィールドレビューを行った結果、主審の判断が覆ることもあれば覆らないこともある。
一個人の感想としては、判断が覆るケースの方が多い印象。
まあそもそもVARの介入は最小限で、なおかつ明白な間違いをなくすことが目的である。VAR室側も明白ではない(言葉は悪いが大した事象ではない)場合、VAR室側も強く言わないのである。
ちなみにVARと主審の会話風景はJリーグ公式が動画にしてアップしているので、よかったら見て欲しい。
余談 DOGSOについて
DOGSO(ドグソ)とは
DOGSOとは
JFA DOGSO(ドグソ)とは?サッカーのルールを分かりやすく解説
「Denying an Obvious Goal Scoring Opportunity」の略語で「決定的な得点機会の阻止」という意味になります。
https://00m.in/hWgLp
DOGSOは決定的な得点機会の阻止が適用条件となり、その条件には4つの要件を満たしている必要があります。
DOGSOの4要件
- ゴールとの距離
- プレー全体が相手ゴールに向かっているか
- 守備側競技者の位置と数
- ボールキープないしはコントロールができる可能性
ゴールとの距離
まず理解しておいて頂きたいのは、DOGSOが適用されるのは特定の接触等(ファール等)がなければ適用はされません。
当然ですが絶好機にドリブルミスってボール外に出しちゃったなんて適用されるわけがありません。
JFAが公式に出している文章には “一般的にはペナルティエリア内、ペナルティエリア付近で、目安としてはゴールまで25m以内の距離で決定的な得点機会を阻止するファウルを犯した場合にDOGSOに該当されます。“と書かれています。
ですが更に加えて、”ただし、具体的な距離の基準はなく、ペナルティエリアから少し離れた位置での反則でも、DOGSOが適用されるケースもあります。“とあります。
例えば上記のような図で、黄色側がチームが攻め込んでいるとします。
青色は相手のキーパーで、赤色の地点で黄色選手と青色選手の接触(キーパーによるファール)があったとします。
距離的に25m以上とするとDOGSO要件を満たさないように思えますが、あくまでも25mはひとつの目安であり、残りの3要件も加味する必要があります。
プレー全体が相手ゴールに向かっているかどうか
先程のような状況で黄色側の選手が抜けてGKと1対1の決定機です。
ただし黄色選手がボールコントロールできず、一度味方に頼ろうと攻める方向とは逆側に体を向けてボールを出そうとした瞬間に接触(ファール)があったとします。
DOGSO要件には相手ゴールに向かっているかが要点となっているため、多くのケースでこのような事象の場合要件外となります。
ただし例外はつきもので、周辺に味方がいたり、キーパーをかわそうとして体がちょっと横を向いていたなどの場合はDOGSOの要件を満たしているとして扱われます。
守備側競技者の位置と数
先程は青色のDFがおらずGKと完全に1対1ですが、今回は青色DFが既にゴール前までたどり着いているケースです。
図のケースはかなり分かりやすくしています。かりに黄色の選手がGKをかわしたとしても、相手DFが既に2人以上構えているため決定的とは言い切れません。
でもこんなケースならどうでしょうか。
仮にGKと接触しても、前には青色DF陣がいません。もしこの場面でGKをかわしていたとすれば、決定的であると判断してもおかしくありません。
ここまではGKが前まで出てきている状況で考えていますが、これは青色キーパーがゴール前に待機していている状況でも当然DOGSO要件を満たすことはあります。
キーパーは確かにゴール前に待機しています。
しかし白色チームのDF陣はかなり遅れを取っています。画像のような状況で、一人抜けてキーパーとの1対1が作れそうな状況で白色チームがファール相当行為をした場合、DOGSO要件を満たします。
たとえ守備にかかわる人が相応の人数(画像の場合少なくとも5人は確認できる)いた場合でも、ボールにコンタクトできるような状況でなければ決定機と言えるためDOGSO要件を満たします。
ボールキープないしはコントロールができる可能性
分かりやすく縦ポンのパスが通りそうな状況だとします。
仮に最前線の選手へこの縦パスが問題なく通り、キーパーと1対1の状況となることを防ぐためDFがファールをした場合、これはDOGSO要件を満たします。
ただし、この縦パスを受けた選手がボールトラップをミスしてもたついていたり、もたついている間に青色チームDF陣が戻って安定した守備をできる状態であれば、DOGSO要件を満たさないためファール扱いとなります。
以上4つの要件ゴールとの距離, ゴールへの向き, 守備の位置と人数, ボールキープ(コントロール)の可能性を満たしていると、DOGSOとなり一発でレッドカードとなります。
めちゃくちゃ適当な図と条件を使ったため逆に分かりづらくなってしまったら申し訳ない。
なお、イエロー提示したけどVARで確認したらDOGSO要件を満たしていたためレッドカードにした試合がカップ戦大一番で発生しているので、この動画もよかったら見て欲しい。
総括
なんでもかんでもVARってもんじゃないのね
自身が現地観戦した際は、やいこらVARはどうした!!!!みたいな反応をしてしまうことが多いのだが、ある程度確証を持てる内容が示せなければVARって介入できない(しない)のね。
VARの仕組みについてはなんとなく知っていたものの、改めて調べるとお気軽に介入できない、相応の確証がなければ介入しないのね。
審判団の皆さん、声出し席でV~~~A~~~R~~~!!って叫んでしまい申し訳ございませんでした。
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