2022年12月23日 追記
最終的な結果が出たので、結果だけ知りたい方はここを押して。
2022年10月19日、Jリーグ界隈(特に磐田界隈)に衝撃が走った。
諸々の事情(後述)により、ジュビロ磐田は1年間(23年1期及び2期)の新規選手登録が不可能となった。
サッカーは選手の入れ替わりが激しいスポーツであるため、新規登録(選手獲得)が禁止されるのはあまりにも痛すぎる。
本稿では制裁をされた理由と制裁内容について、既に報告から相応の日数が経過しているが再考する。
制裁された理由
ファビアン・ゴンザレス選手とタイのクラブ
事の経緯としはて以下の通り。
- 2021年、ジュビロ磐田と契約する前に、タイのクラブと既に契約を交わしていた(?)
- ファビアンゴンザレス側がタイクラブとの契約を一方的に破棄して(?)磐田と新規契約。
- 2022年4月13日、タイクラブ側がFIFAのDRC(紛争解決室)に申し立てを行う。
- 2022年9月29日、当該事案に対する制裁(後述)を磐田に課す。
ポイントとなるのはタイクラブとの契約。
具体的な契約内容は分からないが、恐らくタイのクラブはゴンザレス選手と21年シーズンを戦うという契約を済ませていた。それにも関わらずゴンザレス選手はジュビロ磐田と契約(=タイとの契約を一方的に破棄してジュビロ磐田と契約)してしまった。
二重契約は当然アウト。ゴンザレス選手側はタイと契約破棄をしたつもりだったが、タイのクラブはそれを了承しておらず、(実質)契約が残ったままジュビロ磐田へ加入したと推測するのが妥当だろうか。
余談 制裁決定までの期間
タイクラブが申し立てを行ったのが2022年4月13日。制裁内容が決まったのは2022年9月29日。おおよそ半年かかってようやく制裁が決まった。
以前名古屋グランパスに所属していたジョー選手の契約不履行に関する問題でも、FIFAのDRCが介入したのは記憶に新しいかもしれない。本件では2020年シーズンの契約を名古屋と交わしていたにも関わらず、怪我の治療を理由にジョー選手が帰国。そのまま帰国先のクラブ、コリンチャンスと契約を交わして移籍してしまったというもの。
名古屋側は20年6月にジョー選手との契約解除リリースを出し、その中でDRCに解決を委ねていると記している。そして同年11月、DRCは名古屋側の主張を認める形で4.5億円の賠償をジョー及びコリンチャンスに課す。同裁定に不服があったため、ジョーとコリンチャンスはCAS(スポーツ仲裁裁判所)へ控訴。
結果として2022年6月、3.5億円へ減額されて45日以内の支払いが命じられた。
最終的な結論が出るまでにかかった日数はおおよそ2年。ただしこの2年のうち、CASへの控訴及び裁定を待った日数が1年半以上。ジュビロ磐田についてはクラブ全体に関わる制裁のため相応のスピードでCASも裁定してくれるとは思うが、仮にも来年4月(可能であれば2022年中)までに裁定が定まらない場合、第一期移籍期間(2023年4月頃)の新規移籍が絶望となる…。
制裁内容
本稿のメインとなる部分はここだろうか。
以下の内容は全て、現時点で下された裁定を全て受け入れたケースである。
ファビアン ゴンザレス選手に対して、タイのクラブへの約5万ドルの賠償金の支払命令。なお、ジュビロ磐田は当該支払義務を選手と連帯して負う。
・ファビアン ゴンザレス選手に対するスポーツ制裁として、4ヶ月間の公式戦出場停止処分。・ジュビロ磐田に対するスポーツ制裁として、今後2回の登録期間(2023年第1および第2登録期間)における新規選手登録の禁止処分。
(↑これがクソほど重要)※トップチームを含め、全ての年齢カテゴリーの男子のチームが対象。ただし、当クラブの選手の登録区分変更(例:ユースチームからトップチームへの昇格)、期限付移籍中の選手が移籍期間満了に伴いクラブに復帰する場合等は、スポーツ制裁の対象外。
※U-18、U-15、ジュビロSS、サッカースクールにおいて、2023年度に当クラブに新規入団する新高校1年生、新中学1年生、新小学5年生および新小学6年生は、2023年1月から2023年12月までの間、日本サッカー協会(JFA)への登録が必要となる大会・活動への参加が認められない(ただし、2022年に当クラブで登録済の選手は除く)。
https://www.jubilo-iwata.co.jp/newslist/detail/?nw_seq=8582
選手登録(プロ)
肝となるのは、2022年時点でジュビロ磐田と契約関係があったのか否か。
例えば2022年時点で磐田に完全に所属している選手の契約更新であれば問題ない。しかし、当年に所属しておらず、2023年に他クラブから磐田に選手が移籍するのは不可能。
期限付き移籍についても同様で、22年シーズン、他クラブから磐田に期限付き移籍していた選手であれば、移籍元クラブ次第ではあるが期限付き移籍の延長をすることはできる。だが、23年から新規で期限付き移籍選手を探すのはできない。
ただし、磐田所属で他クラブに期限付き移籍していた選手が23年から磐田に戻るといったケースについては認められる。
とりあえず重要なのは、先述の通り22年時点で磐田と契約関係にあったのか否か。何かしらの形でジュビロと契約が済んでいたのであれば、選手や他クラブ次第ではあるが契約更新(延長)ができる。
とはいえ新規選手の獲得ができないのは、選手の流動性が高いサッカーというスポーツではかなり厳しいもの。有力選手の補強や外国人選手ガチャも当然できない。
選手登録(ユース)
この制裁内容を読むと、全ての年齢カテゴリーの男子のチームが対象と書いてある。そう、トップチームのみならず、下部組織の新規補強も禁止されているのである。
流石に下部組織までも貰い火するのは酷ではないかと思ったが、例えば超高校級選手をユースに引っ張ってきて、特指してトップの試合に出る…なんてことも可能といえば可能なので、その辺りも考慮して制裁対象をクラブ全体(下部組織含む)としたのだろうか…。
ここでも肝となるのは、2022年時点でジュビロ磐田に所属していたか否か。
先程新規補強が禁止と言ったが、ユースからトップへの昇格については制裁対象外である。
また少々ややこしいのだが、恐らくジュニアユース(U15)→ユース(U18)への昇格であれば、恐らく公式戦への試合出場は可能かと思われる(※確証はない)。
今までジュビロに属していなかったが、外部から新高1, 新中1, 新小5,6年として加入する組は公式戦出場ができないのかと。
2022年時点で磐田ユースへ所属しており、トップへ昇格する、ないしは特別指定として登録してトップの試合へ出場するのは許されている。
だが外部のユース年代や大学生を特指して出場させる(大学や高校所属の選手を特指してトップの試合に出場させる)のはアウト。
当然ではあるが、新卒組と新規契約を交わして出場させるのは不可能。もしも事前に特指をしていた場合は恐らく契約できるのだろうが、それをしておらず契約破棄になった事例が発生してしまった…。
師岡柊生選手(東京国際大4年)は磐田と仮契約を交わしており、23年シーズンから契約予定だったが、今回の一件を受けて仮契約次解除。鹿島アントラーズ入団内定となった。先程の画像の右上の例で実質不可能と書いていたが、この件を説明するために実質と書いた。
厳密に言えば、新規選手と契約はできるかもしれない。ただし選手登録はできない。23年シーズンはウチでプレイできないけど、24年からは活動できるから1年待ってくれ!!なんて意味合いを込めて契約はできるかもしれない。
だが選手生命というのは長くない。1年を完全に不意にするほど選手に余裕もない。当然そんな内容を受け入れる選手もおらず、クラブにもそんな余裕はない。
先程の制裁の話に戻るが、新規登録ができないのは下部組織(U18,U15,U12)も同様である。セレクションをして選手を集めるのは可能。チームに所属させることも可能。だが、JFA管轄の公式戦に出場する(=選手登録する)ことはできない。23年シーズンは、22年シーズン磐田下部組織に所属していた生徒のみが公式戦に出場することとなる。23年のU18プレミアリーグやばいんじゃないのか…?
余談 特指の植村選手
2022年現在大学3年生、23年4年生、24年正式入団内定済みの植村選手はDRCの裁定が下る前に特別指定を受けていた。
こちらの内容は先程の師岡選手に関するものだが、記事の一文にこうある。
磐田から獲得できなくなった旨を伝えれたのは、FIFAの発表の1週間ほど前。「ジュビロからは入ることは出来るけど、試合に出られないと説明されました」。特別指定選手の登録を行っていればまだ可能性はあったようだが、師岡はそれもされていなかった。
https://web.gekisaka.jp/news/incolle/detail/?375711-375711-fl
制裁前に、事前に特指をしていれば可能性があったとのこと。
仮にも言葉通り受け止めるとすれば、植村選手の特別指定は2022年8月頃。DRC裁定前に行われた登録のため、23年シーズンにジュビロ磐田の戦士としてピッチに立つことができる可能性もある。
総括
CASの判断待ち。
次の記事には以下のように書かれている。
ジュビロ磐田は、ゴンザレスがタイ国内クラブと契約していた事実を認識していなかったとしてFIFAの判決に不服申し立て。10月19日付でCASへ上訴していた。
https://football-tribe.com/japan/2022/11/30/257276/
するとCASは来月20日にジュビロ磐田からのヒアリングを実施すると、今月30日までに公式発表。ただ磐田の上訴が受理されたかどうかについては現時点で不明とみられる。
この記事が書かれたのは11月。つまり来月20日とは2022年12月20日。ヒアリングは実施されたのだろうが、依然として制裁は継続中。最終的な裁定が下されるのはいつか分からないが、少なくとも年明け以降までは下されないだろうと(勝手に)推測している。
現実的に捉えるとすれば、第一登録期間(4月頃まで)には間に合わない可能性が…。第二登録期間(8月中頃まで)ですら微妙…? だが第二登録期間にすら間に合わないとすればCASに上訴した意味が無くなる。
希望的観測として第一 ~ 第二の間には裁定が下るのではないかと考えているが、全てはCAS次第。
サッカー王国静岡再興に向けて、明るい話題を早くもたらして欲しい…。
2022年12月23日 追記
最悪の結末を迎えてしまった。
ファビアン ゴンザレス選手の契約に関して国際サッカー連盟(FIFA)の紛争解決室(DRC)が下した決定に対し、2022年10月19日にスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ上訴していた件について、12月20日に審問が行われ、下記のとおり、12月22日に仲裁判断が下されましたのでご報告申し上げます。
https://www.jubilo-iwata.co.jp/newslist/detail/?nw_seq=8679&year=2022&month=12
申し立てが認められなかったことは誠に遺憾ではございますが、当クラブはスポーツ仲裁裁判所(CAS)の仲裁判断に従い、スポーツ制裁を受け入れることといたします。
なお、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が下記結論に至った理由は現時点においては明示されておりません。そのため、当リリースに記載されていないご質問には回答いたしかねますので、何卒ご了承ください。
この度の結果を非常に重く受け止め、当クラブのガバナンス体制を改めて見直し、再発防止を図ってまいります。
本件に関しまして、ジュビロ磐田に関わるすべての皆さまに心よりお詫び申し上げます。
上訴が棄却されたことに伴い、第一期及び第二期の新規選手登録が禁止された。
第一期第二期についてだが、Jリーグ公式では
第一期:1月2日以降の第一金曜日~12週間
第二期:7月の第三金曜日~4週間
上記の期間が正式な選手登録(新規選手登録)の期間と定められている。上記以外のタイミングでは特指などを除き選手登録ができない。
裁判の結果2023年の第一期及び第二期いずれも新規選手登録が禁止となっているため、再来年まで選手の獲得はほぼ無い(=今年属していた選手の契約更新でしか選手をまかなえない)ということになる。
(※ほぼと表現したのはユースの特指でシーズン中にトップに帯同することは一応可能っぽいから)
つまるところ、選手の流出は文字通り禁断の移籍となってしまう。
厳冬を通り越して氷河期となってしまった…。
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