【Jリーグ】ニッチな規約・規程を深掘りする 支度金編

サッカー

2023年度が始まってはや2ヶ月。新卒の方もそろそろ社会に溶け込んだ頃合いではなかろうか。
既に社会人だった方は異動,転勤,転職も落ち着いてきたのではなかろうか。

会社によっては就職に伴い、引っ越しにかかる費用、その他付随する出費は会社負担で全て賄ってくれることもあるのだが、サッカー界ではどうなのだろうか

完全に筆者のふとした疑問であるのだが、参考になる規約・規程が存在するので、今回はその点について少し深掘りしてみる。

はじめに

本稿は原則として、Jリーグ公式サイト(もしくはJFA)に掲載されている規約・規程を参考にしています。

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
Jリーグの理念や組織、経営情報、規約などについて公開するオフィシャルコーポレートサイトです。

なお本稿では、特にこちらの規約を参考にしています。
※下記リンクを開くと”プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則”についてのpdfファイルが開きます。

https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br20.pdf

なお規約・規程は適宜改定されるため、本稿の内容と実際の規約との間に相違が発生する場合があります。

Jリーグに存在する❝支度金制度❞

8.支度金
8-1 支度金
クラブは、新規採用した選手又は移籍した選手に対し、次に定める「支度金支給基準規程」の金額を上限として、支度金を支払うことができる

プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則8-1支度金 より引用

難しく考えずとも、クラブ側が新規契約選手に対して支度金を支払う(上限アリ)ことができる制度。

支度金はあくまでも新規契約した選手(移籍等を含む)に対して支払うものであり、規約を読んだ限りでは、契約更改時には恐らく支払われない。

また規約には”支度金を支払うことができる“とある。是則、❝支払いたいなら支払ってもいいし、支払いたくないなら支払わなくてもいいよ❞ってこと。
※ただし上位カテゴリクラブなら支払われるのが当然のような状況ではある。

野球ではドラフト指名やFA移籍による新規契約において、年俸やインセンティブとは別で契約金が数百万~1億超支払われることもあるのだが、日本のサッカー界では契約金の概念は存在しない。強いて言うならば支度金が契約金のようなポジションにはあたる

海外リーグであれば多額の契約金が支払われるケースもあるが、Jリーグではクラブごとの極端な選手層の偏り、高額な契約金によるクラブ経営の悪化が懸念される。
何よりサッカー選手はクラブとの契約年数が比較的短め(1年未満~数年程度が一般的)なため、契約満了後であれば高年俸クラブからのオファーを受ければ基本的には自由に移籍できるため、契約金制度が導入されていない。


なお支払いの対象者は3種、独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)に分かれる。

独身者は文字通り未婚の選手
既婚者(配偶者のみ)は結婚済みで扶養対象者(お子さんなど)がいない選手
そして既婚(同居扶養家族有)は結婚済みで扶養対象者(お子さんなど)がいる選手

各対象によって上限金額が若干異なってくるのだが、それは後述。

支度金支給基準規程

支度金支給基準規程とは、既婚者か否か、扶養家族がいるかいないかによって分かれる支払い基準金額をまとめたもの。住居費子供用品等家具等自動車の4種類が存在する。

ただし家具等についてはそこから更に二分されており、電化製品その他の家具等に分かれている。そのため厳密には住居費子供用品等・家具等(電化製品その他の家具等)・自動車の5種として考えるのが妥当。

各区分への支払い金額

この項では各区分(独身・既婚・既婚(扶養家族有))への支度金の合計金額(最大)を算出する。

なお記事の最後の方でも記述するが、クラブによっては財政面の都合上支度金は払えなかったり、事前にクラブ側が設定した金額(上限範囲内)のみを支給する可能性もある。

今回まとめている金額はあくまでも支度金を満額支給された場合のケースであるという点を考慮しておいて欲しい。

住居費 80万円~150万円

住居費については独身者80万円既婚者(配偶者のみ)100万円既婚者(同居扶養家族有)150万円となっている。
なお各区分全てに共通しているのだが、

規約に表記されている表には、住居費金額の横に(1DK)などの記述が併記されている。
独身者であれば1DKが妥当であり、1DK相当の金額を80万円程度と計算されて表記されているのかと思われる。実際に1DKの部屋をクラブ側が用意してポンッと選手に貸与する形ではないはず。知らんけど。

また既婚者(同居扶養家族有)については一番高額な150万円となっているが、単身で移籍の場合は対象とならない可能性がある(まあ家族も引越し予定だったけど諸事情で来れなくなった等の理由はいくらでも後付できそうな気はする)

費目\支払対象独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)
住居費80万円100万円150万円
子供用品等
家具等電化製品
その他の家具等
自動車
合計
現時点の合計金額

子供用品等

子供用品等の支度金が支給されるのは、既婚者(同居扶養家族有)の区分に限る。
支給金額は50万円

独身者、既婚者(配偶者のみ)については支給対象外。あくまでも既婚者でなおかつお子さんなどがいらっしゃる場合に限る。

ただし同居扶養家族との表記のため、お子さんを含めた家族が同居を前提としない移籍の場合は対象とならない可能性もある。

費目\支払対象独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)
住居費80万円100万円150万円
子供用品等0円0円50万円
家具等電化製品
その他の家具等
自動車
合計
現時点の合計金額

家具等

家具等については独身・既婚問わず一律で支給される。
なお先述の通り、家具については電化製品その他の家具等の2つに分類される。

いずれも区分問わず一律100万円ずつが支給上限

費目\支払対象独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)
住居費80万円100万円150万円
子供用品等0円0円50万円
家具等電化製品100万円
その他の家具等100万円
自動車
合計
現時点の合計金額

自動車

自動車についても、家具等と同じく独身・既婚問わず一律で支給される。金額は100万円が上限
(100万だと新車は厳しそうだが年俸で賄うか中古でなんとかって感じだろうか)

費目\支払対象独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)
住居費80万円100万円150万円
子供用品等0円0円50万円
家具等電化製品100万円
その他の家具等100万円
自動車100万円
合計
現時点の合計金額

合計金額

費目\支払対象独身者既婚者(配偶者のみ)既婚者(同居扶養家族有)
住居費80万円100万円150万円
子供用品等0円0円50万円
家具等電化製品100万円
その他の家具等100万円
自動車100万円
合計380万円400万円500万円
現時点の合計金額

独身者は380万円、既婚者(配偶者のみ)は400万円、既婚者(同居扶養家族有)は500万円となった。
(ちなみに冒頭で添付したpdfファイルを確認してもらえれば、これとほぼ同じような表が載っている。その他詳細についても記述されているので、詳しくはpdfファイルを確認して欲しい。)

2007年頃にJFA会長が裏金使ったら容赦なく降格処分にするからなというお触書を出したくらいには徹底しようとしているのがこの支度金制度。

Jリーグが誕生した――1993年5月15日(川端康生) - エキスパート - Yahoo!ニュース
<極私的スポーツダイアリー>1993年5月15日、Jリーグ誕生 レーザー光線がスタジアムを飛び交っていた。TUBEのギタリストが奏でる大音響が響き渡り、10枚のチームフラッグがスタンドを滑り降りていく

ルーキーでも「高卒1500万円大卒3000万円」の高年俸を手にした選手たちが外車を乗り回し、時には写真週刊誌の標的になったりもした。

Jリーグが誕生したー1993年5月15日より引用

でも高卒・大卒ルーキーとはいえガッツリお給料もらっているんでしょう?と思うかもしれないが、現在のJリーグはA・B・C契約制度を取り入れており、新卒組は原則としてプロC契約という契約から始まる。
詳しくはコチラの記事を読んで欲しいのだが、ざっくり要約すると新卒ではどれだけ頑張っても年間460万円しか貰えない
(※勝利プレミア給などのインセンティブは考慮していないものとする)

少なくともルーキーイヤーについては、年俸だけで考えると想像しているよりかは貰っていないのである。世知辛い…。

なお、プロA契約となれば年俸は青天井となる。
活躍度合いや移籍先次第で年俸1億以上、海外であれば2桁億も夢ではないのは熱いぜ。

注釈

この支度金については、初めてプロ選手として統一契約を締結するときに限りもらえるお金
支度金に該当する費用が伴う場合にのみ支出されるため、とりわけ不要な支度金については支給されない。
※引越しに関わる費用(引っ越し代、交通費、宿泊費等)については別途実費で支給可能。

この条件はカテゴリ問わず適用されるため、JFL所属であっても初めてのアマ→プロ契約, 新卒→JFLプロ契約のような形であれば支度金の対象となる(はず)。

なおWEリーグ(女子プロサッカーリーグ)についてはまた別の規約が存在するため、本稿で書いた支度金の対象とはならない。

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