勝敗に影響する審判員の競技規則の適用ミスがあったJ2第8節のモンテディオ山形-ファジアーノ岡山は、31日午後7時からNDソフトスタジアム山形で行われる。ミスがあった0-0の前半11分から再開される。いわゆる誤審による「再試合」はJリーグでは初めてとなる。出場選手や登録メンバーは変更が可能。
J初の“誤審再試合” J2山形-岡山、午後7時からミスがあった0-0の前半11分から再開
勝敗に影響する審判員の競技規則の適用ミスがあったJ2第8節のモンテディオ山形-ファジアーノ岡山は、31日午後7時からNDソフトスタジアム山形で行われる。ミスがあった0-0の前半11分から再開される。いわゆる誤審による「再試合」はJリーグでは初めてとなる。出場選手や登録メンバーは変更が可能。
2022年4月、モンテディオ山形とファジアーノ岡山の試合で発生した”競技規則の適用ミス”によって、Jリーグでは初となる再試合が行われた。
ここでふと疑問に思う人も多いだろう。競技規則の適用ミスとはなんぞや。
単なる誤審とは何が異なるのか。そういった点にも着目して話を進めていく。
そもそも何が起きたのか
■事象
山形vs岡山 競技規則適用ミスによる試合の取り扱いについて【明治安田J2 第8節】
① 前半10分、モンテディオ山形GK・後藤 雅明選手が味方競技者から意図的にパスされたボールを手で阻止した
② GKがペナルティーエリア内で味方競技者からの意図的なバックパスを手で扱った場合、競技規則上は当該選手に懲戒の罰則は与えられず、相手チームの間接フリーキックで再開されるべきものであった
③ ところが、主審は競技規則の適用を誤り、後藤選手に退場処分を命じた。合わせて、副審・第4の審判員も誤りを正すことはなかった
④ そのまま試合は継続され、0-1のファジアーノ岡山の勝利で試合が終了した
要約すると、味方からのバックパスをキーパーが手で取っちゃったから、キーパーが退場処分となった。
山形陣内で山形の選手がボールを回している最中、キーパーへボールを回したら思いのほか強めに蹴ってしまったディフェンダー。ボールはキーパーの横をすり抜けてゴールマウスを割る…寸前でキーパーが手を使ってかき出す。
無論、ルール違反である。詳しい競技規則の適用方法については割愛するが、このケースではキーパーの反則をとって間接フリーキックとして再開するのが正解だった。
つまり今回の事例では、退場処分を下してはいけない状況で退場処分を下してしまった。
「誤審」と「競技規則の適用ミス」
本稿の肝となる部分である、「誤審」と「競技規則の適用ミス」について。
ほぼ同義のような気がしないこともないが、正しく解釈すれば全く異なる2つであることがわかる。
誤審
サッカーファンのみならず、スポーツを嗜む方にとっては何かと身近(?)な言葉である誤審。
「誤審」の一例はたくさんある。
「審判の判定が正しくなかった」のではと思われる事象を、一般的に誤審と言う。
競技規則の適用ミス
では競技規則の適用ミスとはなんぞやという話。
まず要点を述べると、本来適用してはいけない懲罰を適用してしまうと競技規則の適用ミスとして扱われる。ではどんなケースがこれに当てはまるのかを深掘りしてみる。
今回はファールスローを一例として取り上げる。
スローインはピッチ外もしくはライン上から両手でオーバースローする必要があるのだが、ピッチ内から片手でアンダーハンドスローしたとする。誰がどう見てもファールとなる。
この場合ファールスローとして扱われ、相手チームのスローインとして再開される。
(審判に向かって投げつけたなどの特殊な背景がある場合は別とする)
ところが審判はこれをファールスローとして扱わず、何を思ったか当該選手にレッドカードを提示して退場させた挙げ句相手のフリーキックとして試合を再開させた。こうした場合は競技規則の適用ミスとして取り扱われるのだ。
それでは先ほどの誤審とこの競技規則の適用ミス、何が違うのかは、次のように解釈してほしい。
そもそものジャッジ(審判の判断)が間違っている場合は誤審
ジャッジの正誤を問わず、(懲罰の有無を含め)本来適用させてはいけない規則を適用させた場合は競技規則の適用ミス
このようになる。
ファールスローであれば相手のスローインとして再開するのが規則。
┗ なぜかファールスローをとらずそのまま試合を続けたら誤審
┗ 相手のフリーキックで再開させたりしたら競技規則の適用ミス(一例)
DOGSOなら当該選手を退場処分にするのが規則。
┗ DOGSOなのにDOGSOをとらずそのまま試合を継続させたら誤審
┗ DOGSOなのにイエローカード1枚提示しただけで試合を再開させたら競技規則の適用ミス(一例)
エリア内で倒されたならPKを与えるのが規則。
┗ 明らかにエリア内で倒されたのにファールをとらずそのまま試合を継続させたら誤審
┗ エリア内で倒されファールと判断したがPKを与えずなぜかエリア外からフリーキックさせたら競技規則の適用ミス(一例)
そもそものジャッジが正しくないんじゃないの?圧もかけてないし相手選手が勝手につまづいて倒れただけなのにカード提示!?といった、審判の判断そのものが間違っている場合は誤審。
ジャッジがの正誤を問わず、審判がジャッジを下した直後、適用させるべき規則を適用させなかった場合は競技規則の適用ミス。
(誤審した上に競技規則の適用ミスなんてことがあったら誰かの首が飛びそうな予感…)
総括と注釈
サッカー競技会規則を改正 アマ試合では適用ミスがあっても原則再試合は行わず…日本サッカー協会
日本サッカー協会は18日、都内で理事会を行い、競技会規則の改正を決定した。
これまで天皇杯、Jリーグ、アマチュアの試合において、試合の勝敗に重大な影響を及ぼす競技規則の適用ミス(主審が競技規則に基づいていない対応をしてしまった状態)により、再試合(再開試合)やPK方式のやり直しを実施した事例が確認されていた。
だが、同様の適用ミスが発生した全試合で対応を行うことは大会運営上、試合関わる審判員を含むさまざまな観点からも現実的ではないため、今回は競技会規則の第27条を追加した。アマチュアレベルの試合において、勝敗に重大な影響を及ぼす適用ミスが発生した場合、別途、大会要項等で定めない限り、試合結果は有効なものとみなされ、原則として再試合を行わないことを決定した。
一方、天皇杯とJリーグはそれぞれ規定で定めているため、これまで通り、再試合を行うこともできる。
サッカー競技会規則を改正 アマ試合では適用ミスがあっても原則再試合は行わず…日本サッカー協会(スポーツ報知)
極めて一部界隈でJリーグでは再試合されない!と誤認されていたため注記しておきたい。
上記の通り、日本サッカー協会は協議会の規則を改正。アマチュア以下のカテゴリでは競技規則の適用ミスがあったとしても再試合は行われない。
だが、Jリーグや天皇杯についてはこれまで通り、競技規則の適用ミスが確認されれば再試合となる可能性がある。
アマチュアをどの程度まで捉えるかによるが、”Jリーグ”や天皇杯と書かれているあたり、Jリーグ(J1~J3)はおそらくこれまで通り再試合が実施される(可能性がある)。一方でJFL以下(地域リーグ含む)は、各大会で別途規則を定めない限り再試合は行われなくなる。
競技規則は適宜改められているため、気になる場合は定期的にJFA公式ホームページを確認してほしい。
本稿の総括だが、誤審=競技規則の適用ミスではないことは理解していただけただろうか。
誤審は審判が判定を誤った際に生じる事象で、競技規則の適用ミスは審判が競技規則に則った懲罰や指示を与えなかった際に生じる事象。
試合中(試合後)に騒がれる審判の話題のうち、9割9部9厘は前者(誤審)である。
後者に至る例はほぼ存在しない(日本では本稿冒頭で紹介した山形ー岡山の事例のみ)ため、基本的に再試合はほぼ起きないと思って良い。
余談だが、試合中の豪雨・雷の影響によって試合が中断され、天候の回復が見込めないため後日中断した時間から再試合といった例はいくつか存在する。こうした例についてはWikipediaで確認してほしい。
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