コアなJリーグファン・サポーターあるある。
選手と同じ列車で移動する。
新幹線でアウェイ遠征の民であれば1度くらい経験したことがあるのではないだろうか。
特に試合終わりで本拠地へ帰る際、同じ号車とまではいかないものの、同じ時間帯の列車に乗車するため駅やホームで偶然見かけることが。
自身も一度だけ遭遇したことがあるのだが、ふとした疑問がここで沸き立つ。
サッカー選手ってグリーン車で移動できないの?
私が某駅のホームでJ2クラブの選手・スタッフを見かけた時、彼らは確かに普通車指定席に乗っていた。プロスポーツ選手、それもサッカーだなんて華しかない世界だと思っていたのだが、意外と実情は異なっていた。
そんなサッカー選手・スタッフの移動についてだが、実は旅費に関する規約・規程が存在する。
今回はこの旅費規程の内容について、少しだけ深掘りしてみようと思う。
はじめに
本稿は原則として、Jリーグ公式サイトに掲載されている規約・規程を参考にしています。
なお本稿では、特にこちらの規約を参考にしています。
※下記リンクを開くと”旅費規程”についてのpdfファイルが開きます。
旅費規程
https://www.jleague.jp/docs/aboutj/regulation/22.pdf
なお規約・規程は適宜改定されるため、本稿の内容と実際の規約との間に相違が発生する場合があります。
そもそも❝旅費規程❞とは
第1条〔目 的〕
旅費規程-第1条〔目的〕より引用
本規程は、Jリーグ規約に基づき、選手、監督、コーチ、審判員およびマッチコミッショナー等の交通費・宿泊費について定める。
Jリーグのリーグ戦はホームアンドアウェイ方式で、同じチームと年間2回、自クラブのホームと相手のホーム(アウェイ)の2ヶ所で試合をこなすのが原則。
自クラブのホームであればとりわけ余計な移動も宿泊も必要とならないが、アウェイでの試合であれば当然移動・宿泊に伴う費用が発生する。その移動手段や費用について定められたのがこの旅費規程である。
審判員やマッチコミッショナーの旅費について
第3条〔審判員およびマッチコミッショナーの交通費 ・宿泊費〕
旅費規約-第3条〔審判員およびマッチコミッショナーの交通費・宿泊費〕より引用
(1) J3を除く公式試合の審判員およびマッチコミッショナーの交通費・宿泊費は、次の基
準によりJリーグが支給する。
審判員やマッチコミッショナーについては、一定の基準範囲内であればJリーグ側から旅費・宿泊費が支給される。
ただし次項から述べる各カテゴリごとの旅費宿泊費事情については、基本的に各クラブが選手・スタッフ全員分を負担することとなっている。※例外的にJリーグ側が一部補填する場合もある
なお本稿ではあくまでも各カテゴリごとの交通費・宿泊費についてを述べるため、審判員やマッチコミッショナーの件については、この項目以降では触れない。
まあ正直選手・スタッフたちと大差ない内容ではあるが、気になる方はコチラをクリックして確認して欲しい。
※リンクを押すと旅費規程についてのpdfファイルが開きます。
旅費規程 第2条 〔公式試合の交通費・宿泊費〕
全てを書き連ねると膨大な量になってしまうため、一部要約して記述する。
なおJ1・J2とJ3では一部規程が異なるため注意する必要がある。
J1・J2の移動
- 移動する人員数は27人(役員,監督含むスタッフ9名,選手18名)を上限とする
- 移動は新幹線グリーン車(または在来線特急グリーン車,寝台)を原則とする
- 試合当日にホームへ帰れない場合は飛行機の利用を認めることがある
- 宿泊費は試合前の1泊分として1名につき20,000円以下とする
※試合当日に本拠地へ帰れない場合は試合後に1泊を認めることがある
特筆すべきはやはり上から2つ目、新幹線グリーン車移動の原則についてだろうか。
次の動画では、新幹線移動について那須さんが話している。
これが現実である。
規程上はJ1でもJ2でもグリーン車が原則。そう、あくまでも原則である。
要するところJ2クラブのほとんどは原則の外側、例外として指定席を使っている形となる。
(実際こうしないとJ2クラブでも財政面が破綻しかねないクラブが多い気がする)
那須さん+佐藤勇人&寿人兄弟の対談にて、移動についても同様のことを話していた。
J1の多くはグリーン車移動、J2のほとんどは指定席移動だが、結局のところクラブ事情次第ではある。
資金的に余裕のあるクラブであれば、たとえJ2へ降格しようとも特定の条件をもとにJ1待遇を維持(その分どこかにしわ寄せされる)するケースもある。
J1・J2移動についてのまとめだが、規約・規程上はいずれのカテゴリであっても新幹線グリーン車移動が原則となっている。ただしあくまでも原則であり、J2クラブの多くは指定席を利用している。
J3の移動
- 移動する人員数は27人(役員,監督含むスタッフ9名,選手18名)を上限とする
- 移動は新幹線普通車(または在来線特急,B寝台)を原則とする
- 試合当日にホームへ帰れない場合は飛行機の利用を認めることがある
- 宿泊費は試合前の1泊分として1名につき12,000円以下とする
※試合当日に本拠地へ帰れない場合は試合後に1泊を認めることがある
移動人員数や飛行機利用についてはJ1やJ2と変わらない。ただし宿泊費については12,000円以下とされている(J1・J2は20,000円以下)。
そして移動は新幹線普通車(または在来線特急またはB寝台)のどれかを原則としている。
J1・J2はグリーン車が原則(J2では形骸化しているのは内緒)だったのに対し、J3では普通車(指定席or自由席)と、ややグレードが抑えられている。
それでもまぁ、新幹線か飛行機移動かと思っているそこのあなた。
大間違いぞ。
2023年現在ガイナーレ鳥取所属なのだが、アウェイ松本山雅との試合では9時間かけてバス移動をされている。
バス移動の都合もあり前泊を2泊、試合後は0泊で本拠地まで直帰というスケジュール。
試合終了後、クラブハウスへ到着したのは翌日午前1時36分とのこと。
当然資金の都合や地域の事情(空港や駅との距離)によっては、このように長距離のバスやフェリー移動も検討される。
もちろん新幹線を一切使わないというわけではない。ただし鳥取のように空港の都合(国内線の行き先が限られている)や、最寄り新幹線駅の都合によっては、費用面の都合でバス移動の選択をせざるを得ないことが多い。
先程の田中選手によるガイナーレ鳥取宮崎キャンプ動画では、11時間かけてバス移動をしている。公式戦の移動ではないのでこちらについては旅費規定は適用されないのだが、”地方でサッカークラブを運営する”ことの実情が垣間見える。
総括
J1
- 移動に際しての人員数上限は28人(スタッフ9人,選手18人)まで
- 移動は原則として新幹線グリーン車(もしくは特急グリーン車,寝台)を利用
┗ほとんどのJ1クラブは新幹線グリーン車利用。距離次第で飛行機利用。 - 宿泊の場合は1人1泊20,000円まで
J2
- 移動に際しての人員数上限は28人(スタッフ9人,選手18人)まで
┗J1と同じ人員上限 - 移動は原則として新幹線グリーン車(もしくは特急グリーン車,寝台)を利用
┗原則ではあるが、実際は指定席がほとんど - 宿泊の場合は1人1泊20,000円まで
┗J1と同じ宿泊費
J3
- 移動に際しての人員数上限は28人(スタッフ9人,選手18人)まで
┗J1と同じ人員上限 - 移動は原則として新幹線普通車(もしくは特急普通車,B寝台)を利用
┗J1・J2と異なり、新幹線普通車・特急普通車が原則となっている。 - 宿泊の場合は1人1泊12,000円まで
┗J1・J2とは異なり、上限が12,000円となっている
“原則“のワードが肝。
原則なので例外を適用させてしまえば最悪原則を守れなくても問題ないのが実情(実際J2クラブのほとんどで守れていないだろうし)。
良い待遇受けたけりゃ頑張ってカテゴリ上げろというスタンス、プロスポーツ界隈では当然なのかもしれないし、社会人でも似通った部分はある。ただ、ここまで露骨に優劣つくのは(なおかつ年によって上下するのは)、プロスポーツ界特有かもしれない。
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