2023年シーズンもいよいよ佳境を迎え、優勝や昇格争いをするクラブもある程度数が絞られてきた頃合いではなかろうか。
そんなきらびやかな戦いの裏で、血で血を洗う残留争いが繰り広げられていることを忘れてはならない。J1やJ2はもちろん、J3, JFL, 地域リーグなど、全てのカテゴリで残留争いは発生しているのだが、今回はJ3とJFL間の入れ替えについてフォーカスを合わせる。
Jリーグ(+JFL)の位置付け
まず本題へ入る前に、日本サッカーのカテゴリについて軽く整理しておく。
最上位から順にJ1, J2, J3とカテゴライズされている。JFLはJ3よりも下のカテゴリ。
更に言及するとすればJFLよりも下のカテゴリも存在しており、J1・J2・J3・JFL・地域1部・地域2部・都道府県1部・都道府県2部・都道府県3部・都道府県4部まで存在する。Jリーグ換算でJ10まで存在することとなる。
※地域2部や都道府県リーグは参加クラブ数の都合上、地域1部までしかなかったり、都道府県2部までしか存在しなかったりする。
JFLは上から4番目にあたるため、意外と上位カテゴリなのではと思いがちだが、選手の多くはアマチュア契約選手。Jリーグ入り(J3昇格)を目指してプロ契約で選手を引っ張ったりすることもあるが、それはごく一部の事例に過ぎないという点は釘をさしておきたい。
J1からJ3までは”Jリーグ“が管轄しているのだが、JFL以下は管轄外。Jリーグであれば一定のメディア露出が見込まれ、それを前提としたスポンサー収入も(各クラブの営業努力次第で)JFLクラブより大幅に増えるため、選手にとってもクラブにとってもJFLがプロ・アマを隔てる壁といった位置付け(と筆者は認識している)。
ぬるま湯から地獄の釜となったJ3
「Jリーグの村井満チェアマンは25日、J3と日本フットボールリーグ(JFL)のチームの入れ替えを2023年シーズン後にも実施する可能性があると明らかにした。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021112501185&g=spo ※現在はリンク切れしています。
JリーグはJ3の上限を20チームとしており、15チームが参加する今季を含め、これまではJFLへの降格はなかった。村井チェアマンは理事会後の記者会見で、『サッカーは開かれた存在であり、どこのクラブにもチャンスがある。一方で、ぬるま湯であってはならない厳しさがJリーグの底上げに寄与する』と説明した。」
従前のJ3は基本的に来る者拒まずのスタンスだった。
JFLへの降格は存在しないが、JFLからJ3への昇格は可能。J3で最下位が続こうとJFLに落ちることはなかったのだが、Jリーグの各カテゴリを20クラブずつにするという方針に伴い、J3にもテコ入れがなされた構図だ。
そのテコ入れ1年目がまさに今年、2023年シーズンである。
2023年シーズンから、J3→JFLへの降格制度が導入された。JFLへの降格条件やJ3への昇格条件少しだけややこしいため、簡潔にまとめてやろうというのが本稿の目的である。(本題に入るまでの導入が長すぎるだろ)
昇格・降格・入れ替え戦
■Jリーグ入会の順位要件見直し
・JFLのリーグ戦における最終順位が2位以内であること
※JFL2位以内のクラブがJリーグ入会のためのクラブライセンス交付判定を受けていない場合、3位以下のクラブが繰り上がることは無い
※2022シーズンまでのJリーグ入会の順位要件:
JFLのリーグ戦における最終順位が4位以内であり、かつ、JFLに属する百年構想クラブのうち、上位2クラブに入っていること■J3クラブ・JFLクラブの入れ替えについて(J3クラブの会員資格喪失(※)およびJFLクラブのJリーグ入会)
(1)理事会においてJリーグ入会承認を得たJFLクラブが1クラブの場合
①当該JFLクラブがJFLのリーグ戦年間順位1位の場合
・J3における年間順位最下位のクラブとJFL1位のクラブが自動入れ替え。
・J3・JFL入れ替え戦は開催しない。
②当該JFLクラブがJFLのリーグ戦年間順位2位の場合
・J3における年間順位最下位のクラブとJFL2位のクラブとの間でJ3・JFL入れ替え戦を実施する。
・入れ替え戦に勝利したJFLクラブはJリーグに入会してJ3クラブとなり、敗戦したJ3クラブは会員資格を喪失する。(2)理事会においてJリーグ入会承認を得たJFLクラブが2クラブの場合
https://www.jleague.jp/news/article/24405/
・J3における年間順位最下位のクラブとJFL1位のクラブが自動入れ替え。
・J3における年間順位19位のクラブとJFL2位のクラブとの間でJ3・JFL入れ替え戦を実施する。入れ替え戦に勝利したJFLクラブはJリーグに入会してJ3クラブとなり、敗戦したJ3クラブは会員資格を喪失する。
長ったらしく書いてあるため、上から順番に要約をする。
Jリーグ入会の順位要件見直し
J3昇格のための条件は、J3ライセンスを交付されており、なおかつJFLで2位以上であること。
詳しくは後述するのだが、昇格の権利がJFL1位からJFL2位に移ることもあるのだが、3位には移らない。JFLで2位以上が絶対的な条件の1つである。
2022年までは上位4位以内であれば良かったのに対して、2023年からは上位2クラブに絞られたため、J3への門戸は確実に狭まっている。
J3クラブ・JFLクラブの入れ替えについて
ここからはJ3クラブ視点・JFLクラブ視点に分けて説明する。
JFLクラブ視点
JFLクラブは先程述べたように、J3ライセンスを交付されており、なおかつJFLで2位以上であることが昇格するための条件である。更に細かく条件分けすると以下の通りとなる。
■JFL上位2クラブのうち、1位のみがJ3ライセンス交付済み
J3へ昇格
■JFL上位2クラブのうち、1位および2位がいずれもJ3ライセンス交付済み
1位は自動昇格、2位はJ3 19位クラブとの入れ替え戦に回る
■JFL上位2クラブのうち、2位のみがJ3ライセンス交付済み
J3最下位クラブとの入れ替え戦に回る
■JFL上位2クラブのうち、どちらのクラブもライセンスを持っていない場合
J3・JFL間の昇格も降格も発生しない
特筆すべき点は、J3ライセンス持ちでJFL2位になったクラブだろうか。
ライセンス持ちJFL1位は無条件で自動昇格なのと比べて、2位は入れ替え戦をすることが前提となる。2位クラブは”自動”昇格とはならない。
J3クラブ視点
書いている内容はJFLクラブ視点と大方同じだが、こちらではJ3クラブ視点で記述している。
■JFL上位2クラブのうち、どちらもライセンス持ちの場合
J3最下位は降格、J3 19位はJFL2位クラブとの入れ替え戦に回る
■JFL上位2クラブのうち、1位のみがライセンス持ちの場合
J3最下位は降格、19位以上はJ3残留
■JFL上位2クラブのうち、2位のみがライセンス持ちの場合
J3最下位はJFL2位クラブとの入れ替え戦に回る
■JFL上位2クラブのうち、どちらのクラブもライセンスを持っていない場合
J3・JFL間の昇格も降格も発生しない
J3クラブ側の視点で特筆すべき点は、やはり最下位クラブと19位クラブとの差であろうか。
J3最下位クラブは、JFL1位, 2位のいずれかにJ3ライセンス持ちクラブがランクインした時点で、確実に降格の危機に曝される。少なくとも入れ替え戦、最悪の場合自動降格となる。
対して19位の場合、基本的に自動降格とはならない。
JFL上位2クラブいずれもJ3ライセンスを持っている場合に限り、JFL2位と入れ替え戦を行う形だ。その条件以外はJ3残留となる。
とか言っちゃって、なんだかんだJFLクラブはどこもJ3ライセンス持ってて結局J3 19位でも入れ替え戦に回らされるんでしょ?と思いがちだが、そんなこったない。
JFLのJ3ライセンス状況
JFL所属クラブのうち、半数以上はJ3ライセンスを交付されていない状態である。
現時点で首位を走るJFLの門番ことHonda FCはJ3ライセンスを持っておらず、ソニー仙台もライセンスを持っていない。だが、ソニー仙台以下は団子状態。ここから2節~3節も消化すれば順位が大幅に変動していてもおかしくない。
ライセンス不交付クラブがJ3への門番的役割を担っているのだが、門番クラブが2位以内に1クラブでも滑り込むだけで、J3下位クラブにとっては運命を分けることとなる。
2023年10月17日現在、JFLは残り5試合(クラブによって6試合)を残して上図の順位。
堅実に考えるのであればJ3昇格に最も近いのはラインメール青森。次いでクリアソン新宿だがここ最近は不調気味。
仮にレイラック滋賀にライセンスが交付されれば、”昇格”を目指す上位争いが更に熾烈になる。そしてそこに立ちはだかるJFLの門番ことHonda FCをはじめとするライセンス不交付クラブ。
J3下位クラブ、特にシーズンを通して苦境に立たされ続けた20位のギラヴァンツ北九州にとっては、JFLの門番たちが救世主になる可能性がありそう。
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