2023年5月15日、ジェフユナイテッド市原・千葉にメンデス選手が加入することが決まった。
Jリーグの登録期間(移籍ウインドー)は2回に分かれているのだが、実は登録期間外であっても選手登録が可能。
今回はその事例について色々と調べる。
登録期間
各国のサッカーリーグごとに登録期間は定められている。
シーズンが春秋制・秋春制か、その他各国の事情も考慮して多少の差異はあるのだが、おおむねどのリーグでも登録期間が合うように設定されている。
なお本稿では、以下のプロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則を参考にしている。
http://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br20.pdf
(※リンクを押すとJFAが出しているPDFファイルが開きます)
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その前に、当然と言えば当然の話ではあるが、選手はJリーグに選手として登録しておかなければ出場ができない。偶然道端を歩いていたオルンガに頼み込んで、1日限定助っ人選手として出場してもらうことはできない。
基本的には選手(もしくは代理人)がクラブと契約を結び、クラブがサッカー協会に選手登録の申請を出し、協会側が承認するというフローを経て試合へ出場することができるようになる。
シーズンによって特例が設けられたりするケースもあるが、原則として毎週水曜日12時までに届け出がなされた選手は、不備がなければ同週金曜日に登録を承認してクラブへ通知する。
つまり、やろうと思えば契約して3日~4日後には試合に出場させることも可能である。
② 移籍の申請・承認
http://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br20.pdf
(1)移籍先クラブは、「追加登録申請」を行う。
…
(7)都道府県サッカー協会は毎週水曜日の12:00までにクラブから申請のあった移籍及び追加登録に対して、不備がないことを確認し、承認する。本協会は、同週の金曜日に登録を承認し、移籍先クラブへ通知する。
プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則 3-3 ②(7)より引用
第1登録期間(ウインドー)
2023年のJリーグは、各カテゴリ共通で2023年1月6日(金)~3月31日(金)までと定められている。
(厳密には1月2日以降の第1金曜日から12週間)
一般的な移籍(Jリーグ基準)では12月から2月頃にかけて行われる。
完全移籍決定!!のようなリリースはこの登録期間前に出されることも多いが、正式な選手登録(試合に出場できるようにする手続き)自体は上記の期間中に行われる。
第2登録期間(ウインドー)
2023年の第2登録期間は2023年7月21日(金)~8月18日(金)と定められている。
(厳密には7月の第3金曜日から4週間)
海外リーグとの兼ね合いもあるため、ガチの補強はここがタイムリミットとなる。
なお欧州では秋春制を採用している国が多い。日本は春秋制のため第2登録期間だが、欧州では第1登録期間に当たるため、どうしても海外の強力助っ人を呼びづらい現状はある。
基本的にはこの期間をもって選手の獲得ができなくなるのだが、実はこの第1登録期間、第2登録期間外であっても移籍や選手の獲得が可能である。
登録ウインドー終了前に契約が終了したプロ選手の獲得
ジェフ千葉へのメンデス選手加入はまさにこれが適用される例。
京都退団リリースが出たのは2023年4月17日だが、これ以前は“契約交渉中”という扱いとなっていた。
契約内容は公開されていないため詳細は不明だが、恐らく1月か2月頃には契約が切れており、京都にとっては既に今季の構想外。
だがなるべく彼のキャリアに傷をつけないために所属扱い(契約交渉中)としていたのだろう。そして他クラブとの契約の目処が立ってきたため退団リリースを出したのだと勝手に推測。
(実際transfermarktでは2023年2月1日よりWithout Club=無所属扱いとなっていた)
リンクをクリックするとtransfermarktでのメンデス選手の履歴ページが開きます
4月17日に京都から出されたメンデス選手退団のリリースは建前上のもので、実際はもっと以前に契約自体は切れていたこととなる。ポイントとなるのは、登録ウインドー期間終了前に契約が終了していたという点。
⑫ 登録ウインドーの例外
プロサッカー選手の契約、登録および遺跡に関する規則 2-1-⑫登録インドーの例外(1)より引用
(1)⑪にかかわらず、登録ウインドーの終了前に契約が終了したプロ選手は、当該登録ウインドー終了後においても登録されることができるものとする(「登録ウインドーの適用例外に関する申請書」(書式H-1)により本協会に申請)。
いわゆるフリー(契約が終了して無所属)の選手であれば、登録ウインドー期間外でも契約して選手登録することが可能である。移籍金の発生しないゼロ円移籍(加入)、フリートランスファーとも呼ばれる。
そのためメンデス選手は夏の移籍ウインドーを待たずして出場が可能である。
千葉との契約が2023年5月15日(月)頃に行われ、同時に選手登録申請をしていたとすれば、毎週水曜日の選手登録届け出期限に間に合い、金曜日に公表される。
つまり2023年5月21日(日)に行われる千葉vs栃木の試合には出場可能である。
※5月17日(水)の清水戦への出場は不可。
育成型期限付き移籍
- 23歳以下で日本国籍を有する
- 移籍元リーグよりも下位リーグ・チームへの期限付き移籍である
- 期限付き移籍契約の途中解約に関して、移籍元・移籍先・当該選手の三者が合意している
上記の3要件を満たしていれば、登録ウインドー外であっても移籍が可能である。
これはよくある期限付き移籍とは若干異なり、名称通り育成を目的とした期限付き移籍。
高卒選手の場合、即戦力として見られず出場機会を得られないケースが非常に多い。そういった若手選手に出場する機会を与えて成長させることを目的としているため、23歳以下で日本国籍を有するといった条件が存在する。
また、同一カテゴリ間では育成型期限付き移籍ができず、移籍元リーグより下位のリーグへ期限付きで移籍することが条件。また期限付き移籍の契約の途中解約に関しても、両クラブ及び選手の三者が合意してようやく移籍が可能となる。
移籍元クラブ | 移籍先クラブ | 移籍可否 |
J1 | J1 | 不可能 |
J1 | J2 | 可能 |
J2 | J3 | 可能 |
J2 | JFL | 可能 |
同一カテゴリJ1→J1やJ2→J2は不可能, 下位カテゴリへの育成型期限付きのみ可能
ゴールキーパーの適用例外
稀な例ではあるが、ゴールキーパーに関しては適用例外として認められる場合に限り、移籍が可能となる。
(※完全移籍ではなく期限付き移籍が一般的)
愛媛FCは9日、GKパク・ソンスの負傷に伴い、登録ウインドーの適用例外に関する申請を行い、ロアッソ熊本のGK原裕太郎が期限付き移籍で加入することが決まったと発表した。移籍期間は2016年5月9日から2017年1月31日までとなっている。新背番号は37番に決まった。
パクは昨年12月に右膝前十字靭帯損傷で全治約8か月と診断され、現在は韓国で治療およびリハビリ中。原を選手登録する代わりに、パクの登録抹消の申請が行われたものの、パクは変わらず愛媛の所属選手になるという。
https://web.gekisaka.jp/news/jleague/detail/?189078-189078-fl
上記の記事では、愛媛FCのGKパクソンス選手が負傷に伴い帰国、治療およびリハビリを行っているため、パク選手の選手登録を抹消して、代わりに熊本から期限付き移籍してきた原選手を選手登録したというもの。
フィールドプレイヤーであれば(適正ポジションという概念に目を瞑れば)多少なり選手の替えがきかなくもないのだが、ゴールキーパーについてはどうしても替えがきかない特殊なポジションである。そのため特例として、キーパーに限り登録ウインドー外であっても選手登録が可能である。
なおこの特例で選手を登録する場合、特別な理由によって出場できないゴールキーパー選手の登録は速やかに抹消されなければならない。
総括
- 登録ウインドー終了前に契約満了となっている選手
- 育成型期限付き移籍
- ゴールキーパーの適用例外による移籍
原則としては上記の3例でのみ、登録ウインドー外での移籍や契約(選手登録)が可能となる。
実は、その他FIFAが承認した場合は登録ウインドー外においても登録することができるという文言もあったりするのだが、想定外の事態が発生した場合に備えた例外的な規則。過去にこれを適用した具体例を見つけることが出来なかったため本稿での説明は省略した。
京都→千葉というズッ友ラインによる移籍。色々と期待したいところ。
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